
そもそもアルバムのタイトルが「電クラ」。
“融合の魔術師(©treja.com)・杉ちゃん&鉄平”と言えど、「電車」と「クラシック」は融合するものなのか?融合するのである。
断言しよう。二人がこれまでで最も魂を込め、且つ趣味と趣味と実益を兼ねて作ったアルバムであると。
このアルバムの一端を耳に、目にしたのは、5/11・日本青年館での「梅ちゃんの青い童話 青空姫」公演でのことだった。
ピアニストとして参加している「杉ちゃん」こと杉浦哲郎。彼のソロ・タイムで初披露されたその曲名は「山手線上のアリア」。
グランドピアノの脇に立つ女性が両手で持っているのは「か、紙芝居?」なワケはない。ホームの案内表示よろしく「池袋」の文字。関東近県にお住まいの方はピンときたかもしれない。「池袋」は「大崎」と共に山手線の発着駅なのである。
あの緩やかなメロディが流れ出し、会場には「ほうっ」と安心したような空気が漂い出す。ほんの束の間ではあったが。
「♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪〜♪」。演奏が始まってすぐにあちこちで噛み殺したような笑いが起き始めた。特に男性の声が目立つ気がする。きっと仕事等でよく山手線を利用しているのだろう。(各人にとっての)アノ駅の発車メロディーが「G線上のアリア」に自然に散りばめられている。そしてそれは概ねひっそり、時に堂々と「ドア閉まります」と主張しているのだ。


思わず「ラララ」と歌い出したくなる高田馬場。ビールを飲みたい衝動に駆られる恵比寿。
スピードを上げて走る山手線のごとく、鍵盤が鎚を叩く音も激しさを増していく。駅名を記した案内表示もそれに合わせてどんどん捲られていく。品川・田町・浜松町…この辺りは同じメロディーが続く。ベル音の上野を過ぎると…ああ、もうすぐ「池袋」である。「いけぶくろ〜いけぶくろ。終点でございます。どなたさまもお忘れ物なさいませんようお降り下さい。」という車内アナウンスが、勝手に頭の中で流れていた。
ちなみに、この日の公演を偶然観た<Mステーション>のスタッフの方が「山手線上のアリア」を大層気に入ったそうで、後日番組内でアルバム紹介の運びとなったのである。ステーション。日本語で「駅」。このアルバムを紹介するにはピッタリ過ぎる番組であった。
手元に届けられた「電クラ」のサンプル盤を、遠足前日の小学生のようにワクワクしながら聴いてみた。杉鉄のアルバムを全て所有している、“永遠のクラシック素人”の意見として聞いてほしい。
二人ともノリノリだ。レコーディングとか撮影とか、ものすごく楽しかったハズだ。だから、聴く人にもその楽しさが何かしら伝わると思う。
少しだけ不安なのは、このアルバムを超える楽しさを今後二人が見つけられるかどうか。何しろ実益より趣味が勝っているのだから。
【担当:P】
